核兵器に関する透明性の向上

令和7年1月31日
【概要】
 透明性の向上は、敵対国の誤解や誤算によって生じ得る危機を未然に防ぐための信頼醸成措置(CBM)の一環として発展してきた。核兵器の軍備管理・軍縮においても、透明性の向上は、互いの誤解を防ぎ偶発的な核戦争を防止するという伝統的なCBMの一つとしての意義がある。核兵器不拡散条約(NPT)運用検討プロセスにおいても、透明性の原則は、不可逆性の原則、検証可能性の原則と並び、核軍備管理・軍縮上の義務を実施するに当たっての3原則の一つとして位置づけられている(2010年NPT運用検討会議で合意された「行動計画」の「行動2」)。透明性なくしては、不可逆的に核兵器が削減されていることを検証することは困難であるので、これら3つの原則の中でも、透明性の原則は、他の2つの原則の基礎となる重要な原則と言える。
 
【活動の状況】
 日本は、従来から核兵器を含む軍備の透明性向上をCBMの一つとして重視してきた。近年は、より行動指向的な核軍縮を目指すべきとの考えに基づいて、具体的かつ実際的な透明性の向上を訴えてきている。
 例えば、2010年のNPT運用会議で採択された行動計画に盛り込まれた核兵器国による核軍縮の進捗状況に関する2014年の準備委員会での報告(行動5)や標準報告フォームの作成(行動21)は、日本の提案に基づくものである。
 2010年運用検討会議の合意を受けて、日本は、標準報告フォームの一案を作成し、豪州と共に2010年9月に結成した軍縮・ 不拡散イニシアティブ(NPDI)の提案として、5核兵器国に提示し、2015年NPT運用会議に向けた2012年の第1回準備委員会においてNPDIの共同作業文書として提出した。その後もNPDIは、日本と豪州の主導の下、累次の準備委員会や運用検討会議の機会に、標準報告フォーム案を含む透明性の向上に関する共同作業文書を提出してきている。(参考:2024年の第2回準備委員会に提出した、透明性の向上に関するNPDI共同作業文書)。
 2022年の第10回NPT運用検討会議において岸田総理大臣(当時)が打ち出した「ヒロシマ・アクションプラン」においても、核兵器国に対し、核戦力の透明性の向上、とりわけ、核兵器用核分裂性物質の生産状況に関する情報開示を求めている。このヒロシマ・アクションプランは、2023年5月のG7広島サミットで発出された「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン 」においても歓迎されている。

【活動・ステートメント】
2024年
2024年10月29日 透明性及び説明責任に関するNPDIサイドイベント 
 
2024年7月30日 2026年NPT運用検討会議第2回準備委員会(クラスターIII特別時間:運用検討プロセス強化)における市川大使ステートメント
 
2024年7月29日 2026年NPT運用検討会議第2回準備委員会に際する透明性・説明責任・運用検討プロセス強化に関するNPDIサイドイベント
 
2024年5月30日 軍縮会議(CD)本会議における「核ドクトリン・核戦力を含む透明性の向上」に関する市川大使ステートメント
 
2023年
2023年8月9日 2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会(クラスターIII特別時間:強化された運用検討プロセスの強化)における小笠原大使ステートメント

2023年8月 NPDIによる運用検討プロセス強化に関する共同ステートメント (日本参加)
 
2023年6月6日   軍縮会議(CD)本会議における「核ドクトリン・戦力に関する透明性」に関する滑川参事官によるステートメント

2023年5月17日 軍縮会議(CD)本会議における「軍備の透明性」に関する小笠原大使によるステートメント

2021年
2021年 7月27日 軍縮会議(CD)公式本会議における「軍備の透明性」に関する小笠原大使ステートメント(英文)