代表部案内・大使挨拶
令和5年3月20日
小笠原大使挨拶

令和5年3月3日
<当代表部の仕事の概要>我が国は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しています。ロシアによるウクライナ侵略により、国際秩序を形作るルールの根幹がいとも簡単に破られました。同様の深刻な事態が、将来、インド太平洋地域、とりわけ東アジアにおいて発生する可能性は排除されません。特に我が国周辺では、核・ミサイル戦力を含む軍備増強が急速に進展し、力による現状変更の圧力が高まっています。
このような厳しい安全保障環境を、法の支配を通じて、如何に改善していくかが、当代表部の主たる仕事です。我々が扱う、軍備管理・軍縮関係の多国間の枠組みは、安全保障面での法の支配の重要な一部を構成します。これらの枠組みは、個々の兵器に着目しつつ、軍備面での国際的なルールを作り、その履行を確保していくことによって、平和で安定し、予見可能性の高い国際環境を創出するためのものです。
ジュネーブには、「唯一の多数国間軍縮交渉機関」としての軍縮会議(1960年設立の「10か国軍縮委員会」を起源とし、1984年に「軍縮会議」と名称を変更)が設置されており、そのため各種の軍備管理・軍縮関係の条約体の事務局が置かれ、また、会議が開催されています。ジュネーブに所在する当代表部の任務は、これらジュネーブをベースとした軍備管理・軍縮関係の条約体において、日本政府の立場を代表することにあります。また、ニューヨークで開催される国連総会第一委員会(軍縮問題及び関連の国際安全保障問題を担当)や核不拡散条約(NPT)運用検討会議プロセス(年によりウィーン、ジュネーブ又はニューヨークで開催)にも出席し、日本政府を代表しています。
これらの枠組みは、我が国周辺における核兵器を含む軍備増強の傾向を止め、これを反転させ、核兵器による威嚇等の事態の生起を防ぐことで、我が国を取り巻く安全保障環境を改善し、国際社会の平和と安定を実現する上で重要な意義を有します。また、我が国は、唯一の戦争被爆国であるという歴史的使命感を持って、「核兵器のない世界」の実現に向けて、現実的な取組を進めて参ります。
<核無き世界に向けて>
昨年(2022年)8月、7年振りに開催されたNPT運用検討会議では、岸田文雄総理が、「核兵器のない世界」に向けて、「ヒロシマ・アクション・プラン」((1)核兵器不使用の継続性の重要性の共有、(2)透明性の向上、(3)核兵器数の減少傾向の維持、(4)核兵器の不拡散及び原子力の平和的利用、(5)各国指導者等による被爆地訪問の推進)に取り組んでいくべきことを呼びかけました。一ヶ月に及ぶ集中的な議論の末、議長のまとめた最終文書案には、これら5つの行動に関する呼びかけが的確に反映されましたが、残念なことに、ロシア一ケ国の反対のために採択に至りませんでした。日本は、「ヒロシマ・アクション・プラン」を基に、NPT運用検討会議での議論をも踏まえ、核兵器廃絶決議案「核兵器のない世界に向けた共通のロードマップ構築のための取り組み」を起案し、同年10月の国連総会第一委員会に提出しました。同決議は、147票の賛成票を得て採択されました。この決議は、NPT運用検討会議の失敗で失速しかねなかった、国際社会の核軍縮へ向けての機運を維持、強化する上で重要な役割を果たしたと考えます。本年は、NPTの新しい運用検討サイクルが開始されます。また、5月のG7広島サミットでも核軍縮は重要な議題となるでしょう。このような中、私どもも、核兵器のない平和な世界に向けて一層の努力を続けて参ります。
<生物兵器の脅威>
また、昨年12月には、6年振りに生物兵器禁止条約の運用検討会議が開催され、私も副議長を務めました。コロナ禍によって、パンデミックによる影響の深刻さが世界的に再認識されました。生物兵器によっても同様の事態が引き起こされ得ます。この運用検討会議には、同条約を強化するための具体的な提案がなされました。議論を尽くした上で、全会一致により、国際協力・支援、信頼醸成・透明性、遵守及び検証等について検討するための作業部会が設けられ、また、条約事務局の強化も図られました。生物兵器については、テロリスト等非国家主体による使用の懸念が強まっています。本年は、昨年の運用検討会議の成果の上に、強化策を更に具体化、実体化していくための取組みを行って参ります。
<新たな技術が及ぼす安全保障上の影響への対応>
科学技術の高度な利用により、軍事・安全保障分野でも著しい進展が見られ、国際的な禁止・規制のための枠組みが、そのような進展に後れを取っている面も出てきています。人工知能(AI)技術の進歩が安全保障に及ぼす影響や、宇宙における様々な活動が及ぼし得る安全保障上の影響について、今、ルール作りのための議論が行われています。ジュネーブにおいても、AI搭載兵器について、特定通常兵器使用禁止制限条約の下に、自律型致死兵器システム(LAWS)に関する政府専門家グループ会合が設けられ、議論が続けられています。国際人道法がLAWSにも適用されることに合意が形成される等一定の成果を得、更に技術的、法的に掘り下げられた議論が今年も行われようとしています。宇宙については、国連総会決議に基づき、すべての国連加盟国に開かれた作業部会が昨年から立ち上げられ、宇宙における脅威を低減するために、如何なる行動が責任ある行動なのか、について具体的な議論が深められています。日本は、これらの高度な技術を有し、また、これらの高度な技術が不適切に使用されれば、その脅威にも最も曝され得る国の一つです。このような観点を踏まえ、日本は、これらのルール作りに具体的な提案を行い、積極的な参加を続けて参ります。
<通常兵器への取り組み>
地雷や小型武器といった通常兵器は、戦争や内戦、更に犯罪等を通じて、現実に多数の被害者を出し続けています。更に、紛争終了後も、一般人を含めて無差別な被害をもたらすことにより、社会経済開発の大きな妨げとなっています。日本は、これらの通常兵器に関する国際的取組みにも積極的に貢献してきています。当代表部では、昨年は、対人地雷禁止条約の「協力と支援強化」委員会の委員長を務めた他、国連総会第一委員会には、コロンビア、南アフリカと共に、「小型武器非合法取引」決議案を提出しています。本年も、対人地雷禁止条約の「協力と支援強化委員会」の委員として、また、第一委員会では、上述の決議の起案国として、意義のある貢献をして行きたいと思います。
<結語>
ウクライナへのロシアによる侵攻以降、国際社会では、コンセンサス形成が一層困難となっています。特に、軍縮・軍備管理の分野では、各国の安全保障上の利害が直接にぶつかり合うこともあり、合意形成の困難さは深刻です。他方、そのような逆風が吹いているからこそ、国際的な安全保障を法の支配によって律することの重要性は益々高まっています。このような重要性を共有する、米国を初めとする同志国と連帯しつつ、更に、それを越えたコンセンサスの輪を広げるべく、私どもは、具体的な知恵を出しつつ、今年も努力して参りたいと思います。
特命全権大使・軍縮会議日本政府常駐代表
小笠原 一郎 (おがさわら いちろう) 特命全権大使 軍縮会議日本政府常駐代表 |
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1983年 | 国際基督教大学教養学部社会科学科卒業 | |
1983年 | 外務省入省 | |
2000年 | 在インド日本国大使館 参事官 | |
2001年 | 大臣官房国内広報課長 | |
2003年 | 総合外交政策局軍備管理軍縮課長 | |
2004年 | 総合外交政策局軍縮不拡散・科学部軍備管理軍縮課長 | |
2005年 | 大臣官房兼内閣事務官 内閣官房内閣参事官 | |
2008年 | 在ウィーン国際機関日本政府代表部 公使 | |
2011年 | 軍縮不拡散・科学部長特別補佐官 | |
2012年 | 兼原子力安全福島閣僚会議準備事務局長 大使 | |
2012年 | 大臣官房参事官(国会担当) | |
2014年 | 大臣官房審議官(国会担当) | |
2014年 | 在フランス日本国大使館 公使 | |
2014~2016年 | 博覧会国際事務局総会日本政府代表 | |
2016年 | 特命全権大使 マダガスカル国駐箚(コモロ,モーリシャス兼轄) | |
2017年 | 特命全権大使 マダガスカル国駐箚(コモロ兼轄) | |
2020年 | 軍縮会議日本政府代表部 特命全権大使 |
連絡先
代表部連絡先 (郵便物宛先と所在地が異なるため注意)
Délégation du Japon à la Conférence du Désarmement
郵便物宛先: 3, chemin des Fins, Case postale 133, 1211 Genève 19, Suisse
所在地: 3, chemin des Fins, 1218 Grand-Saconnex, Genève, Suisse
電話: +41 (0) 22 717 3444
FAX:+41 (0) 22 788 3818
メール: delegation1@gv.mofa.go.jp
開館時間:9:00-17:30
令和5年 代表部休館日
令和5年 1月 2日(月) 年始休暇 |
1月 3日(火) 年始休暇 |
3月21日(火) 春分の日 |
4月 7日(金) 聖金曜日(任国の休日) |
4月10日(月) 復活祭の月曜日(任国の休日) |
4月24日(月) ラマダン明けの祭り(国連の休日) |
5月18日(木) 昇天祭(任国の休日) |
5月29日(月) 聖霊降臨祭の月曜日(任国の休日) |
6月29日(木) 犠牲祭(国連の休日) |
7月17日(月) 海の日 |
8月 1日(火) スイス建国記念日(任国の休日) |
9月 7日(木) ジュネーブ断食祭(任国の休日) |
11月23日(木) 勤労感謝の日 |
12月25日(月) クリスマス(任国の休日) |
12月29日(金) 年末休暇 |