通常兵器(特定通常兵器使用禁止制限条約、対人地雷禁止条約、クラスター弾に関する条約及び人口密集地における爆発性兵器(EWIPA))

令和4年5月9日

1 特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)

1-1 概要
 特定通常兵器使用禁止制限条約(正式名称「過度に障害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用の禁止または制限に関する条約」(Convention on Prohibitions or Restrictions on the Use of Certain Conventional Weapons Which May Be Deemed to Be Excessively Injurious or to Have Indiscriminate Effects) ,通称「Convention on Certain Conventional Weapons」又はCCW)は,手続事項や適用範囲を定めた枠組み条約及び個別の通常兵器等について規制する附属議定書から成る。現在,以下の5つの附属議定書が成立している。
 日本は枠組み条約及び改正議定書IIを含む議定書I~IVを締結している。
○ 議定書I:検出不可能な破片を利用する兵器に関する議定書(1983年発効)
○ 改正議定書II:地雷,ブービートラップ(注:食物,玩具等外見上無害な物の中に爆発物等をしかけたものを言う)及び他の類似の装置の使用の禁止又は制限に関する議定書(1998年発効)
○ 議定書III:焼夷兵器の使用の禁止又は制限に関する議定書(1983年発効)
○ 議定書IV:失明をもたらすレーザー兵器に関する議定書(1998年発効)
○ 議定書V:爆発性戦争残存物に関する議定書(2006年発効)
 
1-2 最近の動き
(1) 自律型致死兵器システム(LAWS)
2013年、国際NGOが「殺人ロボット阻止キャンペーン」を開始するとともに、国連人権理事会のヘインズ特別報告において「自律型致死性ロボット」に対する国際社会の対処の必要性が指摘されたのを背景に,2013年11月のCCW締約国会合にて,2014年5月に自律型致死兵器システム(LAWS:Lethal Autonomous Weapons Systems)に関する非公式専門家会合を開催することが決定された。非公式専門家会合は2016年まで3年間にわたって開催され,ロボット技術の自律性,軍事有用性,国際人道法の適用等について議論された。また,2016年12月の第5回検討会議において,非公式専門家会合に代えて政府専門家会合を設置することが決定された。会合は2017年からコロナ感染拡大で実施できなかった2020年を除き、毎年実施されており,規制すべきLAWSの定義・特徴,人間の関与の在り方,国際人道法との関係,関連技術の軍事的応用の在り方,今後の議論の進め方又は規制の方向性等について議論されている。また,2019年の会合では,LAWSに関して各国が考慮すべき指針(Guiding Principles)が承認された。
 2021年12月に開催されたCCW第6回運用検討会議においては,これまでのLAWS政府専門家会合の結論と勧告及び各年次締約国会議における議論を踏まえた一つの成果として、締約国としてLAWSに関し以下の宣言を盛り込んだ最終文書が採択された。
・政府専門家グループの結論と勧告の価値及びLAWS政府専門家会合が勧告し,2019年締約国会合で認められた指針(Guiding Principles)を承認すること。
・国際人道法が、潜在的なLAWSの開発及び使用を含むすべての兵器システムに引き続き完全に適用されることを確認すること。
・LAWSの分野における新興技術に基づく兵器システムは、それが過度な傷害又は不必要な苦痛を与える性質を有する場合、又は本質的に無差別である場合、又はその他の国際人道法に従った使用が不可能である場合には、使用してはならないことを認識すること。
・武力の行使に関する決定について、人間は、常に、適用される国際法に従って説明責任を負わなければならないとの信念を有すること。
・CCWが、軍事的必要性と人道的考慮の間のバランスを追求する条約の目的及び趣旨に照らして、LAWSの分野における新興技術の問題を取り扱うための適切な枠組みを提供していると認識すること。
・特に、倫理的観点に留意しつつ、法的、軍事的及び技術的側面を考慮し、LAWSの分野における新興技術に対処する努力を継続し,強化するとの決意を新たにしたこと。
・国際法、特に国際連合憲章及び国際人道法並びに関連する倫理的観点が、政府専門家グループの継続的作業を導くべきであることを確認すること。
 同時にCCW第6回運用検討会議での決定に従って,第5回運用検討会議によって設置されたLAWS政府専門家会合が2022年にジュネーブで引き続き開催されることとなり,2022年2月11日ドミコ(Mr. Flàvio Soares Damico)軍縮代大使が同会合の議長に就任した。
 他方,LAWSについては,定義や特徴,人間の関与の在り方等の重要論点について,各国の立場に引き続き隔たりがある。我が国は,完全自律型の致死性を有する兵器の開発を行う意図はないが,一方で有意な人間の関与が確保された自律性を有する兵器システムは,ヒューマンエラーの減少,省力化・省人化といった安全保障上の意義を有するとの立場からLAWSの議論に積極的に参加していく。
(2)改正議定書II
ア 概要
改正議定書IIは,地雷,ブービートラップ(食物,玩具等外見上無害な物の中に爆発物等を仕掛けたもの。)及び他の類似の装置の使用を禁止又は制限する条約(1998年発効)である。地雷やこれらの装置は,非戦闘員である一般市民に対し無差別に被害を与える恐れがあり,地域の紛争終結後の復興と開発にとって大きな障害となっている。また,近年は,即席爆発装置による被害が急激に増えており,火器を除く他の如何なる兵器よりも甚大な殺傷被害を年々出していると言われ,この問題に対する対応が国際的な課題となっている。
現在、12か国(中国、キューバ、インド、イラン、ミャンマー、北朝鮮、パキスタン、ロシア、シンガポール、韓国、米国、ベトナム)が対人地雷を生産(Landmine Monitor 2021報告)しており、これらの生産国の内、中国、インド、パキスタン、ロシア、韓国、米国は改正議定書IIに加盟しているが、イラン、ミャンマー、北朝鮮、シンガポール、ベトナムは加盟していない。なお、12か国のいずれも対人地雷禁止条約(後述)には加盟していない。
イ 改正の経緯
1980年に採択された特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)地雷等の使用の禁止または制限に関する議定書(議定書II)は,対人地雷が主に使用される内乱には適用されず,また,探知不可能な地雷等を禁止していないなどの限界を内包していたことから,地雷問題に関する国際的な機運の盛り上がりをも受けて,1996年5月,同議定書が改正された。改正議定書IIは内乱にも適用され,また,探知不可能なもの及び自己破壊装置のないもの等,悪質な対人地雷を原則使用禁止とし,移譲の制限が盛り込まれるなど規制の内容が強化された。
ウ 最近の動き(日本議長の下での締約国会議開催)
改正議定書IIの2021年年次締約国会議(12月10日予定)議長に小笠原一郎軍縮会議日本政府代表部大使が選出された。8月16日及び17日,改正議定書II専門家会合が開催され,同議定書の義務履行強化,即席爆発装置を巡る現状と課題について市民社会も交えて活発な討議が行われた。
 12月10日に開催された年次締約国会議では、2016年次締約国会議にて採択された即席爆発物宣言を現状に合わせてコンセンサスによりアップデートした。また、同会議では、国際協力機構(JICA)が、地雷対策に係る南南協力についてのプレゼンテーションを行い、我が国が地雷除去に資する組織・人材育成を含む包括的な支援プログラムを実施し、成果をあげてきたことを紹介した。さらに、JICAの地雷対策支援活動の長年のパートナーであるカンボジアの地雷対策当局、そしてカンボジアからキャパシティビルディング支援を受けて地雷対策を進めてきたコロンビアの地雷対策当局と共に、これまでの活動から得られた教訓やグットプラクティスを、締約国と共有した。新たな即席爆発物宣言は12月13日から17日にかけて開催された第6回CCW運用検討会議に提出され、同会議の最終文書において締約国により歓迎された。12月10日、年次締約国会議のマージンで我が国は,英国の調査機関であるコンフリクト・アーマー・リサーチ(CAR)と共催で,オンラインセミナー「即席爆発物の上流対策-即席爆発物の製造に用いられる資材の違法拡散及び流用対策」を開催した。

2 対人地雷

2-1 対人地雷問題と国際社会の取組
 紛争地域を中心に埋設された地雷は,非戦闘員である一般市民に対し無差別に被害を与えるという,人道上極めて重大な問題を引き起こし,地域の紛争終結後の復興と開発にとって大きな障害となる。2001年から2020年までの間に記録された死傷者数は,12万5千人以上に上る(Landmine Monitor 2021報告)。この対人地雷の問題に対処するため,1997年に対人地雷禁止条約が成立し,1999年に発効した。条約の発効以降,条約上の義務に基づき460万個以上の埋設地雷が除去され,5300万発以上の貯蔵対人地雷が廃棄されたとされる(Landmine Monitor 2019報告)。一方で,世界における記録された年間死傷者数は,1999年には9,807人であったものが,2013年には3,457人といったんは減少したものの,2018年の記録された死傷者の数は6,897人に達した。2019年には少なくとも5,554名の死傷者を記録した。2018年に記録した6,897人よりは減少したものの、年間の死傷者数が最も少なかった2013年の3,457人よりは60%も多い状況であった(Landmine Monitor 2020報告)。

2-2 対人地雷禁止条約(正式名称「対人地雷の使用,貯蔵,生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」,通称「オタワ条約」)(Convention on the Prohibition of the Use, Stockpiling, Production and Transfer of Anti-Personnel Mines and on Their Destruction)
(1)改正議定書II(1-2(2))は対人地雷の「生産」や「貯蔵」を禁止はするには至っておらず,また, 「使用」や「移譲」の禁止に関しても一定の条件の下の規制となっており,全面禁止とはなっていない。
改正議定書IIに基づく部分的な禁止では対人地雷問題の抜本的な解決には至らず,使用,貯蔵,生産,移譲の全面禁止が必要であるとする国際世論を踏まえ,地雷廃絶国際キャンペーン(ICBL:International Campaign to Ban Landmines)を始めとするNGOと,対人地雷全面禁止に賛同する諸国の協力により,対人地雷禁止条約への道が開かれた。カナダ政府が1996年10月にオタワで開催した国際会議に端を発する,いわゆるオタワ・プロセスを通じて作成された対人地雷禁止条約は,1997年12月のオタワでの署名式において署名のため各国に開放され,1999年3月1日に発効した(日本は,1997年12月3日に署名し,1998年9月30日に締結した。)。2020年5 月現在,対人地雷禁止条約の締約国数は164か国・地域に上り,条約の関連会議には非締約国もオブザーバーとして出席している。他方、対人地雷生産国であるアメリカ、中国、ロシア、インド、韓国、北朝鮮等12か国が加盟していない。
(2)同条約は,対人地雷の使用,貯蔵,生産,移譲等を全面的に禁止し,貯蔵地雷の4年以内の廃 棄,埋設地雷の10年以内の除去等を義務付けるとともに,地雷除去,犠牲者支援についての国際協力・援助等を規定している。2004年には条約発効後初の検討会議がナイロビ(ケニア)で開催され,「行動計画」,「ハイレベル宣言」等の文書が採択された。同様に,その後検討会議は5年毎に開催され,2009年には第2回検討会議がカルタヘナ(コロンビア)で,2014年には第3回検討会議がマプト(モザンビーク)で開催され,それぞれ「行動計画」及び「政治宣言」等の文書が採択された。
(3)2019年11月,オスロ(ノルウェー)で第4回検討会議が開催され,我が国から尾身朝子外務大 臣政務官(当時)を団長とする代表団が参加した。前回の検討会議(2014年)以降の条約の運用・締結状況を記録した「履行状況報告書」,今後5年間の行動指針となる「オスロ行動計画」,締約国のコミットメントを謳う「オスロ政治宣言」という3つの成果文書が採択され,今後の具体的行動指針が明らかとなった。また,2025年までに対人地雷のない世界を達成するという従来の政治目標に向け,更に取組を加速させていくことが確認された。
 
2-3 日本の取組
(1)2003年2月,対人地雷禁止条約の義務を履行するために,我が国は保有する全ての対人地雷(ただし同条約第3条で認められている,地雷の探知,除去又は廃棄の技術の開発及び訓練のための若干数の対人地雷を除く。)の廃棄を終了した。
(2)地雷被害国の多くは発展途上国であり,対人地雷禁止条約に規定される10年の地雷除去期限内に除去を完了するためには,先進国からの支援を必要とするケースが多い。日本は1998年から2019年までの間,51か国・地域に対し,地雷除去,被害者支援,リスク低減教育を含む約8億ドルの支援を行ってきており,地雷対策分野でも日本は世界の主要ドナーである。各種支援に際しては,我が国の地雷対策支援は,(1)深刻な地雷・不発弾被害を受けている国の除去活動への継続的な支援,(2)地域協力・三角協力の推進,(3)地雷・不発弾被害者に対する包括的な支援,の三点を柱としている。
(3)日本の地雷対策支援としては,特に,被害国や被害コミュニティとの協議を通じ,現地の人々が設定した目標について具体的成果が得られるような支援を続けてきた。例えば,カンボジアの地雷対策センター(CMAC)に専門家を派遣し,連携しながらカンボジア政府の「国家地雷活動戦略プラン」に沿って迅速な除去活動や被害地域のインフラ整備を行ってきた。最近では,1990年代からのCMACに対する組織強化支援による知見の蓄積を他の地雷被害国と共有し,ラオス,アンゴラ等との間の三角協力に力を注いでいる。
(4)また,日本は,政府間支援の他に,NGO等を通じた草の根レベルでの地雷対策支援スキームを活用し,被害を受けたコミュニティによる自助努力を後押しする支援を推進している。更に,被害国政府が地雷対策を統括する機関を有していない場合や,緊急の支援が必要な場合には,国際機関を通じた支援を行っている。例えば,2018年4月には,国連の地雷対策機関UNMASを通じた総額930万ドルの地雷対策支援を決定し,数多くの地雷が残存するシリア,イラク,アフガニスタン,スーダン,南スーダン,コンゴ(民)において地雷・不発弾の脅威を削減するための事業を実施している。
(5)2020年11月に開催された第18回対人地雷禁止条約締約国会議において、日本は、同締約国会議終了以降、第20回対人地雷禁止条約締約国会議(2022年開催予定)終了までの間、協力と支援の強化委員として、対人地雷禁止条約の文脈における国際協力や支援の強化に関し、中心的な役割を担うこととなり、2021年11月に開催された第19回対人地雷禁止条約締約国会議の期間中、日本は,国際協力機構(JICA)と共催し、カンボジア、コロンビアとともに「平和構築のための地雷対策-南南協力の主要なパートナーとしてのカンボジア地雷対策センターの成長とJICAの役割」と題したサイドイベントを開催し,日本の地雷対策支援を紹介した。また、第19回対人地雷禁止条約締約国会議(2021年11月15日~19日)で、「協力と支援の強化」委員長に選ばれた。  

3 クラスター弾

3-1 国際社会の動き
 特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みでクラスター弾(注)に関する交渉を開始することが提案されたが,そのための決定ができなかったことを受け,2007年にノルウェーを始めとする有志国がCCWの枠外で国際会議を開催し,文民に許容し難い被害をもたらすクラスター弾を禁止する国際約束を2008年中に策定する旨のオスロ宣言を採択した。この宣言に端を発するオスロ・プロセスにより作成された条約案は,2008年5月,ダブリン会議(アイルランド)において採択され,同年12月,ノルウェーのオスロにおいて署名式が行われた。
 日本は日本国内における条約の実施を確保するため,「クラスター弾の製造の禁止及び所持の禁止に関する法律」を制定し,罰則をもってクラスター弾の製造を禁止,所持を規制し,2009年7月に同条約を締結した。
(注)
 クラスター弾とは,一般的に,多量の子弾を入れた大型の容器が空中で開かれて,子弾が広範囲に散布される仕組みの爆弾及び砲弾等のことをいう。1個の弾薬の爆発力を分散し,通常の弾薬にはできないような広範囲に効果を及ぼすことができる反面,不発弾となる確率が高く,文民にも被害を及ぼすことから人道上の問題が指摘されている。
 
3-2 クラスター弾に関する条約(CCM)
(1)クラスター弾に関する条約(CCM: Convention on Cluster Munitions)は,クラスター弾による人道上の問題に効果的に対処するため,クラスター弾の使用,開発,生産,取得,貯蔵,保有又は移譲等を禁止するとともに,貯蔵弾の廃棄を義務付け,さらにクラスター弾による被害者に対する援助及び国際的な協力の枠組みの構築等について規定している。同条約は2010年2月16日に条約発効に必要な30番目の批准書等の寄託が行われたことを受け,同年8月1日,発効した。2021年3月末現在,締約国数は110か国・地域。
(2)2010年11月,クラスター弾の最も深刻な被害を受けた国・ラオスの首都ビエンチャンにおいて条約の第1回締約国会議が開催された。この会議では,クラスター弾による被害を絶つという締約国による力強い決意が確認されたことに加え,締約国が今後条約を履行する上での具体的な行動指針となる「ビエンチャン行動計画」が採択され,「ビジョンから行動へ」(2010年ビエンチャン宣言)移行する体制が整えられた。2020年11月には,ローザンヌ(スイス)で第2回検討会議が開催される予定であったが,新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う規制措置(集会の禁止等)を受け,会議をパート1およびパート2とし,パート1を2020年11月25日から27日,パート2を2021年9月20日および21日の2回に分けて開催された。同会議では,第1回検討会議以降の条約の履行状況に関する報告及び分析が行われたほか,向こう5年間の取組に関するローザンヌ行動計画やローザンヌ政治宣言が採択された。(於:ジュネーブ)。 

3-3 日本の取組
(1)日本は条約を国内において適確に実施するための法律「クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律」の作成等,必要な準備を整え,2009年7月に本条約を締結した。クラスター弾の汚染国ではない日本は,まずは,貯蔵クラスター弾の廃棄義務を履行する必要があった。クラスター弾に関する条約は,条約が自国について効力を生じた後できるだけ速やかに,遅くとも8年以内に貯蔵クラスター弾を廃棄し,又はその廃棄を確保することを義務づけている(第3条)ことから,日本は条約締結後,条約上の期限である2018年までに自衛隊が保有するクラスター弾の廃棄を完了するための準備に着手し,2015年2月9日にその廃棄を完了した。
(2)また,これまで日本は,クラスター弾等の不発弾に汚染された地域・国に対して,不発弾の除去及び被害者の支援を実施してきており,2020年には,地雷・不発弾(クラスター以外の不発弾も含む)対策に対する支援として約3,900万ドルを拠出した。地雷同様,クラスター弾の被害を受けた国の多くは開発途上国であり,被害国のみの力で除去・被害者支援等の義務を十分に履行することが困難な場合がある。本条約は,締約国が条約上の義務を履行するための国際的な協力及び援助についても規定しており,援助を提供することの可能な締約国が,クラスター弾の被害国に対して義務の履行を支援することで,除去や被害者支援等の対策が迅速に実行されることが期待される。条約の実効性を高め,被害を最小化し,日本の豊富な開発協力の経験をこの分野においても生かす観点から,今後も不発弾処理・被害者支援等の分野において積極的に貢献していく。

4 人口密集地における爆発性兵器(EWIPA)

4-1 概要
 シリア内戦の報道等を契機に,人口密集地における爆発性兵器(EWIPA:Explosive Weapons In Populated Area)の使用が民間人や民間の施設に甚大な影響を与えることを懸念し,これに対応しようとする動きが活発化してきた。
 国連安保理決議第1894号(武力紛争下における文民の保護に関する決議)が採択された2009年以降,EWIPAがもたらす人道的影響に関心が高まったことを受け,国連人道問題調整事務所(UNOCHA)が主体となり2013年,2014年と,EWIPA使用による人道的影響に関する専門家会合が開催された。その後,特に2016年のCCW第5回検討会議以降,オーストリア,アイルランド,ドイツを中心にCCW場裏においても議題として取り扱うべきといった声が徐々に強くなった。
 2018年の第73回国連総会第一委員会では,アイルランド,オーストリア,ドイツ等が中心となり,EWIPAに関する共同ステートメントを実施(最終的には50か国がステートメントに参加)するなど,本件に対する国際社会の注目は高まっている。
 2019年10月,オーストリアは,CCWの枠組み外で,広く国際社会を対象とした「都市型戦争における文民の保護」と題した国際会議をウィーンにおいて開催し,EWIPAに関する政治宣言を採択するための活動をアイルランドと共同で開始した。現在,アイルランド主導の下,政治宣言の内容に関する話し合いが断続的に行われているものの,2021年3月以降,具体的な動きはない。
 なお,我が国は,文民の被害を局限するためには,既存の国際人道法に定められた義務を確実に遵守することが必要との立場からEWIPAに関する議論に積極的に参加している。