国連小型武器行動計画

令和5年6月5日

1 小型武器問題の背景と国際的取組

「小型武器」には、兵士一人で携帯、使用が可能な狭義の小型武器(small arms)、兵士数名で運搬、使用が可能な軽兵器(light weapons)、 弾薬及び爆発物の3種類があり、一般的にはこれらを総称して広義の「小型武器」と呼ばれている(国連小型武器政府専門家パネルの報告書(1997年)。小型武器は、紛争を長期化、激化させるだけではなく、紛争終了後も、人道援助活動や復興開発を阻害し、紛争の再発、犯罪の増加などを助長する原因となっている。2021年の小型武器に関する国連事務総長による安保理への隔年報告書(S/2021/839)によれば、2020年には、武力紛争で10万人あたり5人の民間人が亡くなり、その亡くなった方の約27%が小型武器による被害者であった。
(1)2001年7月に国連小型武器会議が開催され「国連小型武器行動計画(国連小型武器行動計画Programme of Action)」が採択された。「国連小型武器行動計画」を指針として国際社会における取組が行われている。その後、同「国連小型武器行動計画」に基づいて作成された文書として「国際トレーシング文書(International Tracing Instrument)」(2005年)及び「ブローカリング政府専門家会合報告書(2007年)」がある。
(2)2005年に作成された国際トレーシング文書は、その正式名称(「国家が時宜を得た信頼できる方法で非合法小型武器を特定し追跡することを可能にするための国際文書」)が示すとおり、各国が輸入、製造時に小型武器への刻印を行うとともに、刻印などの小型武器に関わる情報を保存し、国際捜査などで必要な際にお互いに情報交換することにより非合法小型武器の追跡を効率的に行おうとするものである。
(3)非合法小型武器ブローカリング政府専門家会合が2007年にとりまとめた報告書は、法的規制が手薄な途上国などに仲介者(ブローカー)が移動して口利きなどの方法で武器の売手と買手を結びつけることによる非合法な武器の輸出入(非合法ブローカリング)を取り締まるために、ブローカリングの規制に関する国内法の要素(模範例)、国際協力の促進措置、勧告を含む行動志向の報告書である。
(4)国連小型武器行動計画のプロセスは、2006年の第1回運用検討会議では成果文書の作成に至らなかったが、その後の隔年会合において過去の実施状況を確認し、また今後の実施強化に向けた取組に関する報告書が順調に採択されている。2008年の第3回隔年会合では国際協力と支援、非合法ブローカリング、備蓄管理と余剰廃棄及びトレーシングに関する議論が行われ、2010年の第4回隔年会合では国際協力と支援、トレーシングの他、国境管理、フォローアップ・メカニズムなどに関する議論が行われた。特に第2回隔年会合におけるフォローアップ・メカニズムの議論では、隔年で行われる会合の他に6年サイクルで運用検討会議を開催することが有用とされ、また絞られた特定のテーマについての政府専門家会合の開催についても検討されることとなった。これを受けて、2011年には、小型武器の刻印・記録保持・追跡に関して、専門的見地から情報・意見交換するための専門家会合が開催された。
(5)2018年に開催された第3回運用検討会議では、国連小型武器行動計画及び国際トレーシング文書の将来の履行に対する各国の強固な意思が改めて確認されたほか、取り組むべき優先課題として、国内法制度の一層の整備や運用を担当する職員の研修、小型武器の輸出入や国内における流通の管理の強化を通じた非合法市場への流出防止、各国が属する地域の特性を踏まえた地域協力や地域を超えた国家相互及び国際機関との協力及び支援、国別報告書の一層の提出促進による情報の共有と交換、小型武器問題の解決に向けた政策決定への女性の参加促進などが成果文書に盛り込まれた。
(6)2019年に公表された小型武器非合法取引に関する国連事務総長報告 (A/74/187)では、国別履行強化に向けて、国連小型武器行動計画及び国際トレーシング文書に係る国別行動計画に基づき、小型武器管理に係る国別目標を提出することが提言された。
(7)2021年7月に開催された第7回隔年会合(当初2020年に開催される予定であったが、コロナ禍の影響で2021年に開催延期)では、新興技術への対応、弾薬の扱い、ジェンダー及び他の関連国際枠組みとの相乗効果といった論点について、活発な議論が行われた。また、2022年6月に開催された第8回隔年会合において、国連加盟国は小型武器問題に特化した国連小型武器フェローシップ・プログラムを、2024年に立ち上げることに合意した。

2 日本の取組

(1)日本は、小型武器問題が国際社会に提起されて以来、国連を中心とする枠組みを通じたこの問題への取組について主導的な役割を果たしてきた。1995年、国連で小型武器に関する問題の検討を開始するための国連総会決議を単独で提出した(A/RES/52/38J)。その後、日本のイニシアティブにより設置された政府専門家グループと政府専門家パネルにおける検討を経て2001年に国連小型武器会議が開催された。同会議は、国連が主催する軍縮関連国際会議としては1987年の第3回軍縮特別総会以来の国連によるイニシアティブであり、日本は、小型武器問題を国連の主要な取組に主流化する上で主導的な役割を果たした。また2018年には、第3回運用検討会議の副議長を務めた。
(2)日本は、南アフリカ及びコロンビアと共同で、小型武器の非合法な取引を根絶し、各国が国連小型武器行動計画を十分かつ効果的に実施することの重要性を確認する小型武器非合法取引決議案を、毎年、国連総会第一委員会に提出している。同決議案はコンセンサス又は圧倒的多数の支持を得て採択されてきている。2022年決議(A/RES/77/71)は、前文パラ23が投票(賛成149、反対0、棄権21)、決議全体はコンセンサスで採択された。
(3)2018年5月に発表されたグテーレス国連事務総長の軍縮アジェンダにおいて、「人命を救う軍縮」基金(Saving Lives Entity (SALIENT) fund)の設立が発表された。これは、平和構築や開発支援の中で小型武器対策を行うことで、紛争予防及び平和の持続に向けてより効果的な取組を行うとの考えの下、国連内に新設された任意信託基金であり、日本は、2018年同基金に2.2億円(200万米ドル)を拠出し、同基金の活動を支援している。  


【参考】日本のステートメント